東京高等裁判所 昭和33年(う)2538号 判決
被告人 久田久光
〔抄 録〕
論旨は、原判決が罪となるべき事実として引用した被告人に対する追起訴状記載の公訴事実中第一の(一)の事実につき原審の事実誤認を主張するものである。よつて記録を調査すると、原判決は被告人の原審公判廷における供述と仲田英俊提出の盗難被害上申書謄本により右の事実、すなわち、被告人が錦織正と共謀の上昭和三十三年一月十二日頃千葉県東金市山田千百六十三番地仲田英俊方において同人所有の南京袋入精米一袋(時価四千八百円相当)を窃取した事実を認定しているのであるが、右原判決挙示の仲田英俊提出の盗難被害上申書謄本によると、同人はその頃南京袋入水粳玄米三袋(一石位、この見積価格一万二千円位)の盗難被害を受けたというのであり、かつ所論援用の細谷由蔵の買受上申書謄本及び錦織正の司法警察員に対する供述調書謄本によるも、被告人が錦織正と共謀の上前記日時頃仲田英俊方で窃盗したものは原判示のごとく南京袋入精米一袋ではなく、所論のごとく、南京袋入玄米一袋であることが明らかであつて、原判決はまさにこの点において事実を誤認したものといわなければならない。しかしながら、精米といい、玄米というも、いずれも米であることに相違はないのであり、しかもその価格については原判決の判示するところに誤りは存しないのであるから、右の誤認はいまだ判決に影響を及ぼすべきものとはいい難いところである。ひつきよう、所論は採用し難く論旨は理由がない。
(坂井 山本長 荒川)